お子様がいらっしゃるご家庭で、最もパニックになりやすいアクシデントの一つが「子供の手が急に動かなくなった!」という状況ではないでしょうか。

今回は、小さなお子様に非常に多い「肘内障(ちゅうないしょう)」について、その正体と対処法を詳しく解説します。お父様・お母様が万が一の時に冷静に対応できるよう、読んでみてください。


「パパ、ママ、腕が痛い!」急に腕を動かさなくなる「肘内障」の正体とは?

「公園で手をつないで歩いていたら、子供が転びそうになって、グイッと手を引っ張った。その直後から、子供が腕をだらんと下げたまま動かさなくなってしまった……」

整骨院には、このような状況で慌てて駆け込んでこられる親子連れの方がたくさんいらっしゃいます。 一見すると「骨折したのでは?」「肩が脱臼したのでは?」と非常に不安になりますが、その多くは「肘内障(ちゅうないしょう)」と呼ばれる状態です。

いわゆる「子供の肘が抜けた」状態ですが、実はこれ、厳密な脱臼とは少し異なります。まずは、肘内障がどのようなものなのか、正しく知ることから始めましょう。


1. 肘内障ってどんなもの?(症状と特徴)

肘内障は、主に1歳から5歳くらいまでの乳幼児によく起こる症状です。

肘内障の主な症状

  • 腕をだらんと下げたままにする: 痛めた方の腕を自分から動かそうとしません。
  • 手のひらを自分(体)の方に向けている: 手のひらを上に向ける動作が痛いため、内側に向けたまま固定します。
  • 触ると泣くが、動かさなければ落ち着いている: じっとしている時はそれほど痛みませんが、大人が腕を上げようとしたり、手首を回そうとしたりすると激しく泣きます。
  • 腫れや内出血がない: これが骨折との大きな違いです。見た目は普通なのに、頑なに動かさないのが特徴です。

「さっきまで元気に遊んでいたのに、急に腕を使わなくなった」という場合は、まず肘内障を疑います。


2. なぜ起こる?(原因と子供の体の仕組み)

なぜ、少し手を引っ張っただけで「抜けて」しまうのでしょうか。それは、子供の肘の関節がまだ「未完成」だからです。

肘の構造と「輪状靱帯」

肘の関節には、橈骨(とうこつ)という骨があり、その先端(橈骨頭)を「輪状靱帯(りんじょうじんたい)」というベルトのような靱帯がぐるりと囲んで固定しています。

大人の場合、この骨の先端がしっかり発達してキノコの傘のように大きくなっているため、ベルトが外れることはありません。 しかし、小さなお子様はこの「傘」の部分がまだ小さく、形も不十分です。そのため、腕を引っ張られるなどの力が加わると、ベルト(靱帯)が骨の先端からスルッとズレて、関節の間に挟まってしまうのです。

これが「肘内障」の正体です。完全に骨が外れる脱臼ではなく、「靱帯がズレて挟まった状態」なんですね。

よくある原因シーン

  • 子供が転びそうになり、咄嗟に手を引っ張った。
  • 手をつないで歩いている時、子供が急に座り込んだ。
  • 「高い高い」をして、両手首を掴んで持ち上げた。
  • 寝返りを打った時に、自分の体の下で腕をひねった。

3. もし肘内障かな?と思ったら(対処法と注意点)

お子様が腕を動かさなくなった時、親御さんが守るべきステップは以下の通りです。

① 自己判断で無理に動かさない

「肩が抜けたのかな?」と思って、無理に腕を回したり、引っ張ったりするのは絶対にやめてください。もし骨折だった場合、無理に動かすことで症状を悪化させ、周囲の神経や血管を傷つける恐れがあります。

② 専門家に診てもらう(整骨院・整形外科)

肘内障は、専門知識を持つ柔道整復師(整骨院の先生)や整形外科医であれば、「整復(せいふく)」という処置ですぐに治すことができます。

整復は、肘を軽く曲げたり、手首を回したりする数秒の処置です。挟まっていた靱帯が正しい位置に戻ると、「コクッ」という感触とともに、一瞬で痛みが消えます。

③ 処置後の様子を見る

整復が終わると、さっきまで泣いていたのが嘘のように、自分からおもちゃを掴んだり、バンザイをしたりできるようになります。処置の瞬間は少し痛がって泣く子もいますが、戻ってしまえばケロッとしているのが一般的です。


4. 骨折との見分け方は?

「ただの肘内障だと思っていたら骨折だった」というケースが一番怖いです。以下の場合は、すぐに整形外科でレントゲン検査を受ける必要があります。

  • 高いところから転落した: 強い衝撃がある場合は骨折の可能性が高いです。
  • 腫れている・熱を持っている: 肘内障で腫れることはあまりありません。
  • 処置をしても治らない: 肘内障の整復をしても腕を動かさない場合、微細な骨折(不全骨折など)を疑います。

私たち整骨院のスタッフは、問診や触診を通じて「これは肘内障ではない(骨折の疑いがある)」と判断した場合は、速やかに適切な医療機関への受診を促します。


5. 繰り返さないための予防法

一度肘内障になったお子様は、小学校に上がるくらい(6歳前後)までは、関節がまだ緩いため再発しやすい傾向があります。

  • 手首ではなく「脇」や「上腕」を持つ: 子供を持ち上げる時は、手首を引っ張るのではなく、脇の下に手を入れるか、二の腕を支えるようにしましょう。
  • 急に引っ張らない: 道路への飛び出しなどは仕方ありませんが、日常生活ではゆっくり手を引くように心がけてください。
  • 周囲に共有する: おじいちゃん、おばあちゃん、保育園の先生など、周囲の方にも「この子は肘が抜けやすい」と伝えておくことが大切です。

総括

「肘内障」は、成長過程の子供には非常によくあるトラブルです。決して親御さんの不注意だけが原因ではなく、子供の体が健やかに成長している途中の「未熟さ」ゆえに起こるものですから、あまり自分を責めないでくださいね。

大切なのは、「慌てず、すぐに専門家を頼る」ことです。

処置が早ければ早いほど、お子様の負担も少なくて済みます。もし夜間や休日などでどこに行けばいいか迷った時も、まずはかかりつけの整骨院や地域の救急窓口に連絡をしてみてください。

当院でも、お子様の肘内障には迅速に対応しております。もし「腕を動かさない」「様子がおかしい」と感じたら、すぐにお電話、またはご来院ください。お子様の笑顔が一日でも早く戻るよう、誠心誠意サポートさせていただきます!


「うちの子、よく肘が抜けるんだけど大丈夫?」といった日常的なご不安も大歓迎です。お気軽にスタッフまでご相談くださいね。